「いちねんせい」
ねりま丹後湯




学生時代に所属していた童謡研究会(現在は廃部)で発表された星の数ほどの創作童謡の中から、いくつかをピックアップしてアレンジし、収録しました。 お聴きくださる方には、CDをお送りいたします。ご希望の方は住所等をメールください。もちろん、送料含め一切無料です。 ご注文はこちらまで



伊達君の詳しいレビューはこちらから。

1 あゝ春休みが待ちどおしい
作詞:三原康宏 作曲:渡邊晃司(1991年)

●楽曲について
1991年の創作童謡、第一位の作品です。この年の創作童謡は当たり年だったようで、いろんな名曲がつくられています。
その中での一位だけあって、相当に完成度の高い歌です。「春休みは宿題がなくていいなあ」という、誰もが子どもの頃に思ったことをちゃんとオチに持ってきている。この納得度はかなり高いと思いました。
●プロダクション
実はこの歌については、文野君が学生時代につくった幻のロケンロールテープというのが存在します。今は封印されてしまったそのテープは、プレスリーばりのエンターテイナーぶりが聴かれるとのことです。
そんなことがあったので、当初からこれは文野君にボーカルをお願いしようと思ってアレンジしました。そのアレンジは、当然ロック。楽しくてにぎやかな感じに仕上げています。
音としては、ベースとキックが難しかった。もうちょっと重い感じにすればよかったか、微妙なところです。
ボーカルはさすがの一言。ドライブのかかった、素晴らしいボーカルです。
前作では「鳥になって」で素晴らしいバラードを披露してくれた文野君ですが、こういうロックボーカルも得意中の得意。高校時代をアメリカで過ごし、思春期にアメリカのロックの洗礼を受けたという文野君ならではのボーカルで、意表を突かれつつも大絶賛なのでした。
それにしても録音中の文野君のボーカルは、マイクに向かってぶつぶつつぶやいているような感じなのに、ミックスしてみると突然に立ち上がってくる。実にマイクによく乗る、スタジオ向きのボーカルです。


2 あたたか日和
作詞・作曲:宮内秀之(1976年)

●楽曲について
丹後が大学一年の時に発表された曲でした。確か「ねぼすけケン坊」と一緒に、宮内さんが発表したと記憶しています。
春、3月頃の気分をとてもうまく表現した歌で、出だしのC→Gの繰り返しに載せたメロディーがウキウキ気分を感じさせて秀逸。そして最後の「あた〜たか〜 びよ〜り」の上がって下がってくるキメのフレーズも見事です。
地味だけれど、名曲です。
●プロダクション
以前ならばカントリーに仕上げたかもしれないけれど、今回はちょいとディキシーの香りを入れました。六文銭の「インドの街を像にのって」という歌のイメージです。
「インド〜」ではバンジョーが入って、よりディキシーぽかったですが、こちらはピアノにしました。こういう吹きものがにぎやかにはしゃぐアレンジは、自分でも大好きです。やっぱり自分の根っ子には、中学時代に浴びるように聴いたディキシーがある。
ボーカルは、比美子です。男の声でもよかったのですが、むしろイメージは男の子であり、それならいっそ女の子の世界のほうがいいと思いました。
さらりと軽やかに歌ってくれて、とても満足です。


3 Sing Sing Sing!!
作詞・作曲:伊達重明(1981年)

●楽曲
これは「ふぁんたじあ」と並ぶ伊達君の名作ですね。
珍しく作詞も伊達君。珍しいというか、唯一?
なんでも卒業を前にして発表した学生時代最後の作品だそうで、仕上げというか、メッセージ的な意味を込めて、こういうスケールの大きい歌を作ったのでしょう。
もちろん丹後は一度も聴いたことがなく、楽譜をひっくり返して見つけました。
そして自分のイメージでアレンジ。勝手に伊達君に渡して「こんなのつくったから、歌ってねー」とお願いしたのでした。
●プロダクション
ブラストストリングスという上物をこれでもかと載せ(そういえば最近のJ-POPはストリングスてんこ盛り。あんなに載せなくてもと思うほど載ってる曲が多いですね)、ピアノでコードを取り、ギターがおかずを入れるという、黄金パターンのアレンジです。
それにしてもブラスは難しいなあ。いつもマイケル・ブレッカーをイメージしているのに、まだまだ未熟です。
間奏のギターは「キラー・クイーン」から一部拝借です。もっと黒っぽくするかどうか、迷いつつ、これぐらい軽く押さえておきました。
ボーカルは本人、伊達君。実はこれは録音し直したものです。
最初に録ったものは実に素晴らしく、伊達君の万感の思いが込められていて、実際それを聴いて丹後は涙腺をゆるくしたのですが、伊達君本人にとってはむしろ気持ちを込めすぎたとの反省があるらしく、また、丹後としても録音がうまくなくてマイクヘの乗りが今ひとつだったことから別のマイクで試したいとの思いもあったので、録音し直したのです。
それがこのボーカル。実に端正な、伊達君らしいボーカルです。
時間があったのでミックスにも伊達君に立ち会ってもらい、けっこうピッチ編集も行いました。
瑞々しく、若々しいボーカルが録れました。とてもいい作品です。


4 かぞえうた
作詞高橋誠子 作曲:伊豆原哲彦(1977年)

●楽曲について
中山親分が数年前「いやあ、いい歌だなあ。最近になってしみじみと、よさがわかってきたよ。特に詞がいい」と伊豆原君のまえで大絶賛したところ、伊豆原君が「詞はオレじゃないすよ」とぼそっとつぶやいた、いわくつきの歌です。
いや、もちろんいい歌です。
わらべ歌ふうの味わい深い歌詞にシンプルなメロディー。実はこういうメロディーは、案外書けそうで書けないものだと思います。
●プロダクション
かつて卒業記念アルバムをつくった時は、あの鎌田君と丹後のギター2本の演奏でした。しかも鎌田君に伴奏をやらせて、丹後がリードを取るという、無謀といえば無謀な演奏でした。
今回はギター一本。しかもリズムを12連符に、大胆に変えています。
このアレンジを思いついたのは、六本木交差点で信号待ちしていた時でした。ふと耳に飛び込んできたのが、たぶん何かのヒーリング系の音楽だと思うのだけれど、ガットギターのアルペジオに同じくガットギターの「ソー」という出だしの音が乗った音楽。
この一瞬のフレーズを聴いた瞬間、このアレンジをすべて思いついたのでした。
こういう具合に予期しないで飛び込んでくる街の音楽が、時々インスピレーションをくれるから、あまりウォークマンを聴いてばかりじゃよくないなあと思うのでした。
ボーカルは中山さんに比美子の多重録音。特にサビの多重録音は、相当に音を重ねました。割といい感じにできたと思いますが、どうでしょう。
ちなみにサビのベースは、オカリナです。楽器としてはあり得ない低さに設定してみました。こういう試みができるのがデジタル音楽の楽しいところです。
なお、歌詞が一部違っています。これは親分のせいではなくて、歌詞を用意した丹後の責任です。というより「ぺんぺん草」をそのまま見せて歌ってもらったので、「ぺんぺん草」の責任なのです。


5 見えないつばさ
作詞・作曲:土橋一夫(1988年)

●楽曲について
童謡研究会、80年代後半の音楽を支え、後に「ドバシ・スタンダード」という言葉を遺した土橋君の代表作です。
今は音楽ライターとして出版や制作に大活躍の土橋君。くわもと並ぶね童謡研究会が輩出した音楽業界人の一人です。
その、くわもが発掘したのがこの曲。「天使なんていないよ」のフレーズに涙がちょちょぎれたので、ぜひ音源化を、とあれは1999年頃だったと思うのですが、連絡をもらい、インスト版をつくりました。
確かに喪天使なんていないよって、いいフレーズですね。土橋君の歌は、短い詞を効果的に繰り返すのが特徴で、この歌でもその味わいがあります。
何よりもメロディーが魅力的。狭い音域で、特に大きなコード進行もないのに、きちんとサビのある説得力の強いメロディーが土橋君の持ち味。
これはなかなか書けそうで書けないメロディーだと思います。
ちなみに土橋君からは、こんなコメントをいただきました。
●作者のコメント
あの曲は、書いた当時はニック・ロウの「恋する二人(Cruel To Be Kind)」という曲が好きで、1970年代後半の英パブ・ロックを経由したフォーク・ロックと動きのあるベース・ラインをどう融合させるか、ということで、完全に曲先というよりもアレンジのアイディア先行で作り始めた曲でした。
桑原さんから後に詞について褒めて頂き、とても嬉しかったことを覚えています。
発表したのはちょっと後ですが、大学に入って最初に書いた曲のうちの1つ(1986年)です。
当時、厚木に住んでいて、よくFM横浜の杉真理さんや伊藤銀次さんの番組を聴いていました。そこでもよく「Cruel To Be Kind」が流れていたので、それで影響されたのかも知れません。
●プロダクション
土橋君がディレクションした村田和人のCDを聴かせてもらい、中のスネアが乾いたとてもいい音をしていたのが印象的で、なんとかそんな音を出したかったです。
イントロのイメージは松田聖子「ピンクのモーツァルト」。歌のところはもっと音が厚かったのですが、最終的にいろいろと削りました。シンプルにしたかったのです。
さりげないバンドサウンド的な音ができたかなと思います。
ボーカルは、井澤君。イメージにぴったりで、ステキなボーカルが録れました。二番のウーアーコーラスは、丹後の声に、シンセサイザーの人工声をかぶせて、リバーブたっぷりにしました。このコーラスのメロディーはお約束のユーミンです。


6 あたしのぶーぶ
作詞:山本美香 作曲:藤井里佳(1987年)
●楽曲について
80年代後半の名曲の一つ。作者の方はまったく存じ上げません。
90年代の後輩たちがつくった、いわゆる「えりずテープ」で知りました。その時のボーカルは、ゆきずーさんでした。
子どもの言葉で歌っているのが新鮮で、案外このテイストの歌は少ないようです。
私じゃなくて「あたし」ってのがいいなあ。「ぶーぶ」という言葉も、何気ないけどステキです。
●プロダクション
昔聴いたアレンジがドーン「幸せの黄色いリボン」。それとは違うアレンジにしたいと思い、ちょっとジャズっぽい感じにしました。ザクザクとリズムを刻むギターにクラリネットというのは、割と得意なパターンです。
こういう自分のポケットをいくつか持てるようになってきて、アレンジャーとしては多少は進化しているかも。
歌は、幼稚園児の娘です。
隠しネタなのですが、実はこの歌、大学生ぐらいになって一人暮らしを始めた娘が、親に電話してきて車をねだっているという想定なのです。冒頭の電話の音、途中のセリフの音も、そういう設定なのでした。
自分の娘ながら、このボーカルはいいなあ。幼稚園児なのにちゃーんとピッチを取っているのは、あっぱれです。


7 ミルクマン
作詞・作:岐部友信(1976年)

●楽曲について
丹後が大学一年の時に、当時五年生だった岐部さんがつくった歌です。
カントリーテイストたっぷりの曲で、よくできています。
「はちみつ色の陽を浴びて」というフレーズは、なかなか素晴らしい。絶品の一行です。
いろんな情景の浮かんでくる、こういう歌は大好きです。田舎の町を配達している、牛乳屋の兄ちゃんが浮かんでくる。
●プロダクション
完璧にカントリーです。イメージはジョン・デンバー。伸びやかに、何の悩みもない、ひたすらに明るい朝を描きたかった。
伊達君には、だからとことんまっすぐに歌って欲しいとお願いしました。
実はこの歌、案外難しく、例えば出だしの「ラ」の音を取るのもけっこう大変です。どうしてもフラットしてしまう。
悩みつつも伊達君、このような爽やかなボーカルを仕上げてくれました。期待以上でした。
実は伊達君「これはえーじが歌った方が」とずっと悩んでいました。確かにえーじ版も聴いてみたいねえ。
一番の左の「おはよう」は、えりずさんの「サボテンの幸せ」から。右の「グッドモーニング」は、井澤君です。


8 おもみのある歌
作詞・作曲:井澤正(1981年)

●楽曲について
井澤君が大学4年生の時に、たぶん適当につくった歌です。「ぺんぺん草」や「創作童謡」を見ても、その適当で投げやりなコメントからも、それがわかります。
まあ、確かに重いものが歩いて行くというだけの歌だものなあ。
そして昨年2009年、「あそびうたグランプリ」という催しがあって、井澤君、伊達君、丹後がそれぞれに応募しました。その時の井澤君の応募作がこれ。
歌詞は、オリジナルとは違っていて、応募に際して変えています。
この「あそびうたグランプリ」二次予選の発表のパフォーマンスは、丹後は見ていないのですが、相当にテンションの高かったもののようでした。
いろんな人が井澤君について「劇団の人ですか?」と聞いてきて、主催者の中川ひろたかさんには「変なおじさん」とまで言われていました。
●プロダクション
アレンジはその「あそびうたグランプリ」に応募したものを下敷きにしています。
そのアレンジで丹後が仮に歌ったものをクルマの中でずっと流して子どもに覚えさせ、後は井澤君を呼んで一緒にお任せ。2回録音して、2回目を使っています。
ミックスでも、ボリューム調整以外、なんの手も加えていません。
そのまんま児童館で録ってきたような、そんな楽しい仕上がりです。


9 オレンジのときU
作詞・作曲:土橋一夫(1988年)

●楽曲について
土橋君の作品。これも「見えないつばさ」と同様、同じフレーズの繰り返し、音域の狭いメロディーと、土橋節満載です。
このシンプルさは、なかなか書けないもので、尊敬してしまいます。
直接には知らない曲で、楽譜を見てとてもきれいなメロディーだと驚き、アレンジをしました。
●作者のコメント
「オレンジのとき II」も確か、プロコル・ハルムの「青い影(The Whiter Shade Of Pale)」にはまっていて、これを意識してアレンジから入った曲です。
1985年に松本隆さんの著書『風のくわるてっと』が文庫本化され(原書は 1972年刊)、そこに「私のプロコル春夢」という章があって、いかにして松本さんがプロコル・ハルムの音楽に傾倒していったかが語られていたのですが、これを読んだ時の印象と、山下達郎さんのNHK FMの番組「SOUND STREET」で1980年代の初めに「青い影」を聴いたときの感動が一緒になって出来た曲でした。
僕の場合、当時は詞を先に「ぺんぺん草」で発表している場合が多いのですが、実はその時にほぼメロディやアレンジも頭の中では出来ている、ということがほとんどでした。ですから「見えないつばさ」「オレンジのとき II」は共に、実際にはメロディやアレンジも同時に出来ていた(もしくは詞の方がむしろ後)というものでした。
●プロダクション
ボーカルは親分。いい歌だなあと喜んで歌ってくれました。
アレンジは、ゴダイゴの「Sun setting on the west」のイメージです。だからストリングスも、ちょっと古くさいイメージにしています。
最初はエレキギターのおかずがあちこちに入っていたのですが、最終的に邪魔なのでカットしました。
それにしてもアコースティックギターのストロークって難しいなあ。今使っている音源はヤマハの最新のものだけど、アコースティックギターに限っては一つ前の音源のほうがいい音がする気がするけど、どうだろう。


10 犬とぼくと宇宙人
作詞:沢良木敦 作曲:鈴木卓生(1993年)

●楽曲について
新しい歌です。
まったくふざけているというか、とぽけているというか。
家に宇宙人がいるから犬は飼えないと言っておいて、帰ったら宇宙人は消えていたって、いったいどういう思想の歌なんだ。
そして、普通なら宇宙人の行方に話が進むところ、そんなことはまったくどうでもよくて、話は給食の残りと犬に向かう。
このとぼけは、なかなかのものです。
●プロダクション
この手の曲の味わいは、当然えーじくんです。
そして、見事に期待以上のボーカルです。
実はえーじくんのボーカルは評価が高く、井澤君も伊達君も、えーじにはかなわないと言いながら歌っています。確かにこの味わいは、えーじでなきゃ無理なんだよねえ。
ただし、えーじくんは、これしかできない。だから、その味わいをきちんと引き出す楽曲を用意することが大切です。
アレンジは、シンセサイザーでピコピコ。実は「すずめ」同様、パーカッションはちょっと凝っています。


11 大きなおとうさん
作詞:桑原正光 作曲:笹川玲子(1981年)

●楽曲について
いかにもくらもらしい詞に、りょうちゃんらしい曲です。
昭和のお父さんを描いた、とてもいい歌です。
くわもによればあまり自信作ではないようですが、なんのなんの、素晴らしい詞だと思います。
この子は北海道に住んでいるんだよね、きっと。
●作者のコメント
童研にはいってわりとすぐにかいた
なんとも習作な詞でありました。(くわも)
●プロダクション
アレンジは軽めな感じで。もっとも例によってギターは何台も使っています。
ストリングスの感じとか、ギターのちょっとしたリフとか、自分なりにけっこう気に入っているアレンジです。
ボーカルは井澤君。こちらも軽めにさらりと歌ってくれました。


12 すずめ
作詞:飯野美恵子 作曲:中山陽司(1975年)

●楽曲について
今は夫婦となった二人が、独身時代につくった歌です。好きな女の子の気を引くために曲をつけるというのは、まあ、よくあったパターンでした(笑)。
もっとも奥様である作詞者は「没にして」と言うぐらい、古い記憶だそうで。
なんのなんの、なかなかに可愛らしい詞です。

●プロダクション
このCDの一番の心残りが、えりずーさんにこの一曲しかお願いできなかったことです。歌って欲しい曲はいくつかあったのですが、どうにもアレンジが間に合いませんでした。
次回作では、ぜひたくさん歌ってほしいと思います。
アレンジは、リズム部隊中心。普通にドラム譜を書いた後、その譜面をシンセのパーカッションセットに読み込ませて重ねるというようなことを繰り返して、このような複雑なリズム部隊をつくりました。


13 しゃぼん玉
作詞:大竹正一 作曲:山口和彦(1972年)

●楽曲について
相当に古い歌で、丹後もかすかに記憶に残っている程度。
楽譜は発見できたのですが、どうも正確さに欠けているし、記憶ともずいぶん違うので、丹後の記憶通りに歌ってもらうことにしました。
昔の創作童謡って、詞も曲も素直なものが多いです。特に曲は、演歌ちっくなヨナ抜きも多く出てきて、古きよき時代という感じがします。
●プロダクション
フィドルの音がきれいだったので、フィーチャーしたいと思ってこういうアレンジにしました。コード進行のせいか、ちょっとメランコリックな感じになりました。
親分のセルフハーモニーは、別テイクのピッチを変えて使っています。
だいたい親分は、1、2回歌うと「もういいだろ」といって終わりです。
この収録も3回歌って「あとは適当に直しておいて」で終了。あっさりしたものです。


14 怪盗ピポピポパポ
作詞:酒井通江 作曲:村田久美子(1986年)

●楽曲について
これは本当に楽しい歌です。例の「えりずてーぷ」で初めて聴きました。その時のボーカルは、ゆきずーさんでした。
作者も知らないし、この曲も知らないので、どんな背景があるのかわかりません。何かの物語の挿入歌だったのしから。
ピホピポパポって名前もどこから来たのだろう。
短いけれども、とても楽しくて印象的な歌です。
●プロダクション
ギターもキーボードもナシ。弦楽四重奏のアレンジです。こういうアレンジもやってて楽しいのでした。
ボーカルは最初、息子だけでした。詞の世界がぴったりだし、あの子のハート盗んでよって意味がわかるかって聞いたら「わかるよ」とのことで、もしや息子、恋してるのか?
ところが息子が一人で歌うと、照れてしまって、再生すると怒り出す。弱ったなあと、娘バージョンもつくりました。
すると、今度は息子が娘をからかってまた喧嘩になる。
困り果てて、いっそまとめてしまえと、ミックスの段階でデュエットにしたのです。だから当初はまったく別々のテイクでした。
それでも一緒にすると息がぴったり。さすがきょうだいです。


15 魔法のチョークU
作詞・作曲:齊藤一妻(1982年)

●楽曲
童謡研究会の有名曲の一つです。詞も曲も、完成度が高いです。
作者の齊藤君は、1年だけ一緒だったので、ちょっと知っていますが、僕が卒業してからどんどんいい作品を書き始めました。その様子は「ある日突然、いったいどうしちゃったのって感じ」(くわも談)で量産が始まったそうです。
●プロダクション
ボーカルは比美子しかいないと決めていました。この出だしの「ぼくの〜」のフレーズがすべてです。
アレンジは、ずいぶん悩んだなあ。3パターンぐらいつくりました。
イントロまで含めて定着している曲とそうでない曲があり、この曲は前者。よく知られたおなじみのイントロというものがあるのです。
そのイントロを活かすか、それともまったく新しくするか、いつも悩むのですが、今回は今までのイントロをいかすつもりで途中までアレンジしたのにどうにもしっくりこなくて、このように別のアレンジにしました。
ネタは、井上陽水「英雄」です(野茂英雄のことを歌った曲です)。ベースにはSanfordBassTightenerというプラグインを使っています。これは一定より下の音域をモノラルにしてくれるプラグインで、音像がぼやけがちになるベースの低音部を輪郭のはっきりしたものに変えてくれます。
おかげで低いながらもかっちりしたベースができました。フリーのプラグインはだいたい期待はずれですが、これは当たりでした。


16 虹を見た日のうた
作詞・作曲:島野正美(制作年不詳)

●楽曲について
ずいぶん古い曲ですが、いつつくられたのか、とうとうわかりませんでした。よくみんなでシングアウトしたものでした。完成度はかなり高い歌だと思います。
●プロダクション
以前アレンジしたときは、サンバにしましたが、今回はポルカというか、鼓笛隊ふうにしてみました。こういうアレンジも実は大好きなのです。
ボーカルは井澤君。最初に録ったものが納得いかなくて、録り直しをしました。
爽やかというか、素直な出来上がりになったと思います。


17 はだしで野道を歩いたら
作詞・作曲:島野正美(1971年)

●楽曲について
これも相当に古い歌です。
なんというか、まさに昭和の僕たち歌謡という感じですね。
●プロダクション
以前アレンジしたときは、フォークロック調のいい感じにできました。今回も同じ路線かと考えたのですが、同じではやっぱりつまらないし、ここはブルーグラスで直球勝負といきました。
どのCDにも一つはブルーグラスを入れたいものです。
ボーカルの親分「得意技だから任せて」と歌ってくれました。ところが得意すぎたのか、無理に元気よく歌いすぎてしまって失敗。
普通の歌い方に戻して、録音をし直しました。


18 僕らの世界
作詞・作曲:竹内比美子(1993年)

●楽曲について
何かのアニメかミュージカルに出てきそうな歌です。80年代から90年代にかけての雰囲気が十分に出ています。
●プロダクション
ポール・サイモンの「シューズにダイヤモンド」のアレンジを意識しました。両サイドのダキーが掛け合いをしています。
最初に井澤君が元気よく歌ってくれたのですが、どうも盛り上がりに欠けるということで、一人三役はどうだろうというアイデアをもらい、録音し直しました。
その結果がこれ。お聴きのようにとても楽しい仕上がりです。
まったく芸達者だ。


19 ちっちゃなひっこし
作詞:桑原正光 作曲:樺沢弘美(1984年)

●楽曲について
これは大変な名曲であると、私は思うわけです。
くわもによれば「運送屋のバイトをして、単身のおばあさんのひっこしを手伝ったのが歌の種になりましたが、うーん、それ以上の記憶はすっからかんです‥」とのことです。
ここで描かれているおばあさんの心のやりとりは、それは素晴らしいもので、特に二番の子どもの頃の写真を眺めているシーンなぞは涙腺がゆるんでしまいます。
このまま引越で遠くにいったきりだと、それは亡くなってしまうことのメタファーにもなってしまいかねないのですが、ちゃんと「必ず遊びに来るって笑った」と救いを残している。さすがです、くわも。
曲も、シンプルながらとてもメランコリックなもので、この詞にはこの曲しかないという感じです。狭い音域で、決して盛り上げるメロディーでもないのに、切なさがすくごく伝わってくる。
樺沢さん、なかなかのメロディーメーカーです。
●作者のコメント
運送屋のバイトをして、 単身のおばあさんのひっこしを手伝ったのが 歌の種になりましたが、うーん、 それ以上の記憶はすっからかんです‥。(くわも)
●プロダクション
アレンジはポール・サイモン「グレースランド」がネタです。
ギターは7台ほど使っていますが、「ギターのちゅいーんちゅいーんは、女の子の涙ですね」とくわもが言ってくれたのが、わかってもらえて嬉しかった。
ベースの音も、シンプルながらけっこうこだわっています。
ボーカルは最初から親分しかいないと決めていました。さすがのボーカルです。
この作品は、楽曲もさることながら、アレンジ、録音、ミックスと、自分にとってはこのCDでベストのものです。自信作。


20 小さなヒミツ
作詞:菅ヶ谷まゆみ 作曲:村田久美子(1985年)

●楽曲について
ピポピポパポもそうですが、村田久美子さんという人は、なかなかのメロディーメーカーですね。それにしてもこの曲、何かの挿入歌だったのでしょうか。
女の子の小さなヒミツの世界が、とても可愛らしく描かれています。
●プロダクション
割と得意な軽いジャズ系のアレンジです。ただ、フルートがちょっと重かった。もう少し軽いフルートにした方がよかったかもしれません。
ボーカルの最後は比美子の一人コーラス。別録りしたテイクのピッチを変えて重ねました。


21 ピーターパンと空
作詞:竹内比美子 作曲:文野武(1991年)

●楽曲について
大曲です。作者に意味を聞いたら「もう忘れた」とのことですが、思春期の出会いと別れを描いた名作です。
伊達君も、とても完成度の高い歌と感心していました。
文野くんによれば「X Japanのエンドレスレインのアレンジをパクることが主眼だった」そうであります。私はその曲は知らないけれど、きっとパクリ元よりはるかにいい作品であることでしょう。
●プロダクション
文野君と同期に大島さんという素晴らしいボーカリストがいて、アメリカでプロになったのかな、という感じぐらいの方なんですが、この人が91年テープで、文野アレンジで歌っています。
そのトラックを超えようとつくった作品です。オリジナルキーはG。さすがに文野くん「もうGは無理です」とのことで、Eに移調してアレンジしました。
アレンジは時間がかかったなあ。何度もやり直しました。イメージはサイモンとガーファンクル「ニューヨークの少年」です。
ずっとこの曲をやりたいなあと思っていて、何度か書き始めてはイメージと違うので投げ出して、その繰り返しでした。そしてある時、ドビッシーの「亜麻色の髪の乙女」が頭に浮かび、このモチーフでイントロをつくってと始めて、なんとか形にすることができました。ストリングスのアレンジは自分でも気に入っています。
三番のストリングスのかけ上がりなどは、自分でもたいへん気に入っています。
ちなみにこのイントロを聴いた伊達君は、即座に「亜麻色の髪の乙女ですね」とにやりと笑いました。さすがです、伊達君。
難しかったのはギターのストロークで、3本重ねていますが、なかなかボリューム感は難しかった。ベースは例によってSanfordというプラグインを通しているので、ところどころで輪郭のはっきりしたいい感じになっています。
ボーカルは文野くん。どうするかと思ったら、高いキーでファルセットと切り替えて歌ってくれました。いやあ、絶品です。聴いていると切なくなるような、素晴らしいボーカルです。
そして、最後のリピートは、これはピーターパンからの返事。なので地声でのウィスパーなのでした。


22 イカの足はゲソ
作詞・作曲:丹後雅彦(2009年)

●楽曲について
あれ、丹後湯CDなのに、丹後の作品がない。そう気がついて、入れることにしました。童研とは関係ない歌です。最近つくった、でも、自分でも気に入っている歌です。学研の「ピコロ」という雑誌の2010年1月号の附録CDに収録していただいた歌です。
冬の子供たちを元気づけようという歌で、冬から始まり、春、夏、秋と続きます。だから3番は、夏のハワイアン!
もっとも掲載に際しては編集サイドから物議を醸されまして、けっこう難産でしたが。それでも掲載されてからはけっこう好評だったようで、とても嬉しく思っています。
●プロダクション
「ピコロ」掲載はシングルの短いバージョンだったので、こちらはアルバム用の長いバージョン。
丹後の場合、新曲を作るときはだいたいアレンジも一緒にやってしまいます。これもルンバかチャチャチャにしようかなと思って、アレンジしつつ作曲しました。
とても楽しい仕上がりになったと思います。
それにしても自分のヨメのことを持ち上げるのは収まりが悪いのですが、3番の比美子のボーカルは絶品だと思います。


まず、ジャケットデザインの井澤君と、写真のえーじくんに感謝です。
春のさわやかなジャケットができました。イメージ通りです。
最初、この春、娘が小学生になるので「この春、むすめはいちねんせい」というタイトルを考えたのですが、長すぎるので「いちねんせい」だけにしました。
要するに、娘の進学記念のCDです。それがわかるようで、娘もことのほか喜んでいます。

オルケスタ・デ・ラ・タンゴ風組という名称は飽きたのでもうやめて、丹後湯としました。最近ではこれをスタジオネームというか、ブランドとして使っています。
ぼぢぼち音楽の仕事も手がけられるようになりましたが、それでもこのCD作りがホームグラウンドいう気がします。要は好きな曲だけ、好きなようにアレンジして、誰にも何も言われないということですが。
今回は、言い方としては少しおかしいけれど「ちゃんと作ろう」と思って作りました。だから変な企画ものはなしです。
システム面では、まず音源がヤマハの最新のものになりました。ついでにCUBASEも最新バージョンにアップデート。もっともCUBASEのアップデートはあまり意味がないというか、しなくてもよかったかなという感じです。
どうもCUBASEは負荷だけが大きくなりすぎて、その分、ノイズがひどくなる感じ。実際、ずいぶんとノイズには悩まされました。
あとプラグインとして世界スタンダードのWAVEを導入。もっとも安価なシリーズだけですが、けっこう威力抜群でした。全部ほしいけれど一番高いセットは120万円もするので、そんなことは不可能なのでした。

目下の課題は、ソフト面ではスコアメーカーをそろそろどうにかしようかということです。いい加減、こんなにも使いにくいソフトを使っているのがいやになってきました。ぼちぼち考え直そうかと検討しています。
もっとも新しいソフトは、それはそれですごく高いのですが。
ハード面では、マイクです。コンデンサーマイク2本、ダイナミックマイク1本を使い分けていますが、これぞという決定版をまだ手に入れていません。あとは、マイクプリアンプです。とりあえず安価なものを入れて、今のマイクとの相性などを試しつつ、どこまでクオリティアップできるか、挑戦したいと思っています。
そのあたりの成果は、次の作品に反映できればと思っています。

その次回作ですが、幸いにも音楽仕事が少しずつではありますが増えてきているので、今度は少し時間がかかりそうな予感がしています。
もしよろしければ、お待ちいただけるとうれしいです。